バリ島アグン山の状況と考えられる被害
日本でも盛んに報道されておりますが、バリ島の最高峰アグン山に50年ぶりの噴火の危険性が高まっております。
当社にもたくさんの問い合わせが来ておりますので、現時点での状況や噴火した場合の予想される被害などについてまとめてみたいと思います。
このアグン山の写真はバリ島の東・アメッドから撮影したものですので、よく見られている山の形と若干違って見えているかもしれません。
<目次>
現在のアグン山の状況(2017年10月2日)
現在時点でアグン山はまだ噴火しておりません。
ただし、噴火警戒レベルは最高位の「危険(AWAS)」の状態であり、火口を中心とした1半径12Kmのエリアは立ち入り禁止、避難指示エリアとなっております。
避難指示エリア内には多くの村があり、そこからたくさんの住民が避難してきています。
9月30日の時点で避難住民は14万人と言われていますが、12Kmの避難指示エリア以外からも避難している方も多く含まれているようで、政府はエリア外の住民を村に戻す方針と言うことです。
先週、山頂から煙が出ていたという報道もありましたが、どうもマグマが地下水に触れたためにおきた水蒸気爆発が起こった模様です。
まだ噴火はしていませんが、いつ噴火してもおかしくないような状況と言うことです。
噴火した際に考えられる被害
活火山であるアグン山は過去何度も噴火しております。
もっとも最近では1964年、つまり53年前に噴火しています。
53年前と近年の噴火ですので、国内外からも多くの調査が入り、また当時の写真や映像(フィルム)も残っております。
さらに、当時のことを覚えているお年よりも、ご存命ですので、噴火の被害に関してもかなり予想がつくと思われます。
以下の被害予想は、それら記録を基にした記事や、地元に住むお年寄りから聞いた話を元にしております。
ただし、自然が相手のことですから、今回も同じような被害で納まると限ったわけではありません。
ひとつの参考資料として判断材料にしていただければ幸いです。
政府防災庁の発表したハザードマップです。
濃いピンクのエリアが火砕流や高温のガスなどが発生する恐れのある危険エリアで、薄いピンクのエリアがそれに準じたエリアになります。
見ていただいてわかるとおり、危険エリアは山の北部および南西部に広がっています。
また、火山灰の影響もありますので、半径12Km以内を立ち入り禁止としたそうです。
Sidemam,Amlapraといった地区に黄色いエリアがありますが、これは噴火によりたまった土砂や火山灰が土石流となって流れたり、洪水になる危険性がある場所だそうです。
ただ、過去の事例を見ますと河川の水量や土石は増えますが、それほど大きな被害は出なかったようです。
ブサキ寺院
アグン山のふもとのブサキ寺院はバリ・ヒンドゥー教の総本山として有名です。
この寺院は、火口から9Kmの位置にあり、当初は立ち入り禁止区域から外れていましたが、現在は立ち入り禁止となっており、僧侶たちも避難していると言うことです。
トゥガナンン村、チャンディダサ
アタで有名なトゥガナン村やダイビングやシュノーケリングで有名なチャンディダサはアグン山の南に位置していますが、火口からの距離も十分あり、途中の地形から危険指定エリアにはなっていません。
地区のお年寄りに聞いても、過去噴火による被害は無かったということで、住民たちは安心して生活しているそうです。
ウブド
山間の村ウブドですが、ここもアグン山火口からは35Kmと離れており、避難対象地域には入っていません。
村のお年寄りに話を聞いたところ、過去の噴火で石が飛んできたとか、ガスが流れてきたと言うことは無かったそうです。
ただし、風向きによっては火山灰が降ってくることがあったそうです。
と言っても、外に出れない、といったレベルではなく、空がかすんでいる、外に出してある洗濯物が汚れるといったレベルだそうです。
ウブドに滞在中に噴火した場合は、以下の点に注意されたらいいと思います。
- 車で移動する場合は窓を閉める
- ホテルなどの部屋はなるべく窓を閉めておく
- 念のためマスクを持ってくるといいでしょう
ウブドエリア内は今マスクが不足気味です。
クタ、スミニャックエリア
クタ、スミニャックなど南部ビーチエリアは火口から65Km以上離れており、ほとんど被害はないと考えられています。
お年寄りの方にお話を聞いても、前回の噴火のときもまったく被害は無く、今回も他人事のように話しておりました。
まとめ
アグン山はバリ島の東側に位置しており、山周辺の地区は高温のガスや降灰などで大きな被害が発生すると見込まれています。
しかし、観光客が滞在するウブドから南側のエリアはほとんど被害は予想されず、せいぜい降灰によりマスク着用くらいではないかと見込まれております。
デンパサール空港閉鎖の可能性
アグン山噴火による被害として、降灰によるデンパサール空港の閉鎖、運行の中止が予想されています。
事実、2015年にはバリ島周囲の島の火山噴火により、数日間飛行機が飛ばないことがありました。
今回はその事例を踏まえて、影響を検討してみたいと思います。
過去の空港閉鎖事例
2015年に周囲の島の火山噴火によりデンパサール空港は閉鎖となりました。
2015年7月3日ジャワ島東部のウラン山が噴火し、7月9日~7月11日の3日間デンパサール空港は閉鎖となり、飛行機の離発着ができなくなりました。
ウラン山はデンパサール空港から見て北西部になり距離は約141km離れています。
2015年11月3日朝ロンボク島のリンジャニ山が噴火し11月3日午後から翌11月4日お昼まで空港は閉鎖となりました。
リンジャニ山は空港から見て北東部にあり距離は約145Km離れています。
なお、アグン山は空港の北東部、距離は58Kmです。
過去の事例からの考察
火山噴火に伴う降灰による空港閉鎖、欠便は、噴煙の量、高さ、風向きによってかなり変わります。
バリ島上空は常に西から東に偏西風が流れています。
そのため、ウラン山の噴火の際は噴煙が偏西風に乗り大量にバリ島上空に流れてきました。
バリ島に離着陸するためには、その噴煙が流れているエリアを通らなければならなかったため、3日間も空港閉鎖となりました。
アグン山は、デンパサール空港の東に位置しています。
噴火しても、噴煙は偏西風に乗って東に流れてしまうので、空港の離発着には影響は無いと見ている人もいます。
とはいえ、空港より東に位置しているリンジャニ山が噴火した際も、空港閉鎖になっています。
アグン山は空港より東にあるから大丈夫とは、言い切れないでしょう。
噴火した場合の対策
アグン山が噴火した場合の空港閉鎖に対する対策についてです。
噴煙の量や風向きなどから、噴煙を避けながら離着陸ができるルートを探すそうです。
アグン山は空港の東にあり、西風に乗って噴煙は東に流れるとの予想から、西回りの航路を取れば、離着陸が可能になると言う予想もあります。
安全に運行できるルートが無い場合は、空港閉鎖、離発着禁止となります。
その場合は、周辺の空港を代替空港ととし振り替え運行をする計画となっています。
運輸省は周辺の10空港を代替空港として準備しており、また乗客の運送のため100台を超える大型バスを準備していると言う報道もありました。
オプショナルツアーの中止
アグン山の危険レベル上昇に伴い、現在当社が扱うオプショナルツアーのうち以下のツアーはお休みとなっております。
- トラガワジャ川ラフティング
(ソベック社、クラブアクア社) - ランプヤン寺院&ヨガツアー
また、ツアーのキャンセルや変更に関しましても、極力ご協力できるよう対応させていただきますので、変更等がございましたら、お早めにご連絡をお願いいたします。
まとめ
簡単に今回の内容をまとめさせていただきます。
- バリ島のアグン山は噴火警戒レベルが最高位でいつ噴火してもおかしくない状況である
- 噴火したとしても被害が出る危険エリアは火口から半径12Kmエリアであり観光客が滞在するウブドや南部エリアにはそれほど危険性はないといわれている
- 風向きや噴煙の量、高さなどにより火山灰の降灰のため空港が閉鎖される可能性がある。
- 空港が閉鎖されても、代替空港などが手配されているので、帰国できないと言うことはない。
過去の事例や政府の発表、マスコミ報道から現在の状況、危険性などについてまとめてみました。
ただ、自然が相手のことなので、予想通りになるかどうかもわかりませんし、予想以上の被害が出ることも十分考えられます。
特に空港閉鎖による旅行スケジュールの乱れは、お休みが少ない日本人観光客にとっては大変な痛手となるでしょう。
スケジュールに余裕が無い、帰国日が遅くなったら仕事などに支障が出るといった恐れがある場合は、無理をせず、しっかりと検討されることをお勧めします。