バリ島の火葬式(ガベン/プレボン)
先日(5月8日)にウブドで大きな火葬式(ガベン/プレボン)がありました。
多くの観光客やメディアが集まり、道路を封鎖して大変華やかな火葬式でした。
バリ島の宗教行事を紹介した文献や記事の中に必ず出てくるこの火葬式。いったいどんなものか?どのようにして行われるかを簡単に解説してまいります。
<目次>
火葬式ってなに?
火葬式とは日本でいうお葬式にあたるもので、バリ人にとって、とても大切な宗教儀式の一つです。
バリ・ヒンドゥー教には、人は死んだあと、別の人に生まれ変わる輪廻転生の考えがあり、「死」とは悲しむべきものではなく、新しい人生の始まりとして喜ぶべきもの、という考えもあります。
その考えのもと、バリ島のお葬式=火葬式は盛大に、派手に行われるのです。自分の親の火葬式を立派に行ったか、というのが、親孝行の証しとも言われます。多くの村人たちが見守る中ご遺体を村の火葬場まで運び、皆が見守る中、火葬にするいわゆる公開火葬式がバリヒンドゥーのお葬式です。
なお、バリ島の言葉バリ語には、同じ物事でも身分によっていい方が違ってきます。今回説明している火葬式も、平民(スードラ)階級の人はガベン(Ngaben)と呼び、貴族階級以上の人はプレボン(Plebon)と呼びます。
身分などによって違う火葬式事情
この火葬式ですが、大変お金がかかります。
一連の式に使うお供え物や飾り物、またお坊さんの手配や手伝ってくれる村人へのお礼などなど、大きな火葬式の場合、数千万円(!)もかかると言われています。
その土地の王家や有力者、実業家、聖職者などであれば、亡くなってからすぐに、火葬式を出すことはできますが、一般の村人には、すぐにお金をそろえる余裕はありません。そこで、行われるのがガベン・マサルという村の合同火葬式です。
ガベン・マサルは村の合同火葬式で、合同で行うことにより、村人の準備や金銭的負担が少しでも軽くなります。一般家庭の火葬式は、ほとんどがこのガベン・マサルで行われます。
一昨年行われた、ウブド・パダンテガル村の合同火葬式(ガベン・マサル)も様子
ここに並ぶのはご遺体を入れる棺で牛の形をしています。この棺も身分などによって形や色が違ってきます
ガベン・マサルは4~5年に一度行われます。それまでご遺体はどうするかというと、いったん土葬にし、ガベンの3日前に掘り起こし(!!)写真の棺に入れて火葬をします。
一方、王族や有力者などの火葬式は、亡くなってからすぐに行われます。
すぐといっても、棺やお供え物などの準備もありますし、なにより火葬式の日取りを決めなくてはいけません。そのため、火葬式は亡くなってから一ヶ月後ということも、珍しいことではないのです。
では、その間ご遺体はどうしているかというと、今はホルマリン注射をして腐敗しないようにしておくそうです。
ガベンパレード
このようにして、多くの労力とお金をかけて行われる火葬式ですが、一番の見どころはガベンパレードと言われる行進ではないでしょうか?
火葬式の行事は、火葬を行う3日以上前から行われますが、ほとんどの儀式は亡くなった方の家の中で行われます。
そして、火葬の日当日、各家庭(ガベン・マサルの場合は合同の葬儀場)から火葬場(たいていは村のお寺)までご遺体を運ぶのですが、これが日本のお神輿のように多くの人によってご遺体を入れたお棺を担ぎ、パレードを行います。これが、ガベンパレードです。
先日(5月8日)に行われたのは、ウブド王族の火葬式(プレボン)でした。王族の式ですので、ガベンパレードも大変派手なものでした。王族のお家はウブド王宮、そこから王族のお寺であるトゥプサヨ村のお寺までの約1Kmをご遺体を入れたバデ(多重塔)や火葬するためのお棺(プヌランガン)を大勢の人で担いで運びます。
王宮の火葬式に使われた牛の形のお棺。とても巨大なものです。火葬式の一週間程度前から準備されていました。王宮内には入らないため、王宮の外に設置。
火葬式当日の様子です。牛の形のお棺の後ろにそびえるのがバデと呼ばれる、ご遺体を入れて運ぶための塔です
バデの巨大で装飾がすごく美しいです
こんな巨大なお棺や塔が大通りを通りますから、通りを横切る電線や電話線は、大急ぎで撤去します。もちろん、その間周辺は停電&電話も不通となります。
こんな巨大なお棺や塔を多くの村人が担いで王宮からお寺までパレードします。沿線には多くの観光客やそれ目当ての屋台などが出て、お祭りのようなビッグイベントとなっています。
この火葬式の様子がさっそくYuTubeにアップされていました。ドローンを使った素晴らしい動画ですので、ぜひご覧ください。
火葬式を見るときの注意点
一般的に、バリ島のお寺の中に入ったり、宗教行事に参加するときは、バリ島の伝統衣装(正装)を着なくてはいけないとされています。
そのため、火葬式の際にはこのようなサロン(腰布)を売りあるくおばさん達がたくさん出没しますが、ガベンパレードを見るだけなら、正装をする必要はありません。
最後にお寺の中で火葬される様子まで見るとなると、サロンをまく程度のことは必要ですが、そうでなければ普段の服装でもまったく問題はありません。
見物は沿道ですることになりますが、人ごみがすごいので迷子になったり、スリや沖挽きなどに充分注意してください。また、お棺や塔を担いだ人たちが歩道の近くまで来ることがありますので、巻き込まれないよう気を付けてください
火葬式は、毎年行われるものではありませんので、いつ行けば必ず見られると言ったわけではありません。
が、バリヒンドゥーを代表する大きな儀式の一つでもありますので、機会があれば是非ともご覧ください。