バリ島ウブド便り

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インドネシアはラマダーンに入りました

6月28日より、インドネシアはラマダーン月に入りました。
ラマダーンと言えば、ムスリム(イスラム教徒)にとって、とても大切な断食が行われる月です。
バリ島は、住民の大半がバリ・ヒンドゥー教徒で、彼らは断食は行いませんが、バリ島には他の島から移ってきたムスリムもたくさんいらっしゃいますし、バリ島のお隣の島、ロンボク島の住民の大半はムスリムですので、今回はラマダーンと断食についてご紹介しようと思います。


◆ラマダーンってなに?
皆さんは、ラマダーン=断食と思われているかもしれませんが、実はラマダーン=断食ではないのです。
ラマダーンとは、月の満ち欠けを基としたムスリム独自の暦、ヒジュラ暦の9番目の月の名前です。ちなみに、8番目の月はシャアバーン、10番目の月はシャウワールと言います。そして、断食はインドネシア語ではプアサと言います。


では、なぜラマダーンが断食と思われているかというと、ムスリムはこのラマダーンの一月間、断食をおこなうからです。ラマダーンの月は断食・プアサの月、という事から、ラマダーン=断食と思われるようになったのです。


では、ムスリムはラマダーン一月間、ずっと断食をするのでしょうか?
そんなことはありません。一ヶ月間飲まず食わずだったら、死んでしまいますね。
実は、ラマダーン月は、日の出から日没までの期間だけ、断食をするのです。そして、日没から日の出の間に、飲み食いをするのです。


なんだ〜、ちゃんと食べてるのか〜・・・
なんて、思われるかもしれませんが、夜間に飲食をするとは言っても、太陽が出ている時間帯は、一切の飲食はできません。
水を飲む事も、たばこを吸うことも、つばを飲み込むこともしないという人までいます。
暑い日中、水も飲めないというのは、かなりつらいことですよね。


では、ムスリムはなぜこんな辛いことをしているのでしょうか?
健康にいいから、とか、精神鍛練とか、いろいろ聞きますが、やはり一番の理由は信仰心だと思います。無宗教といわれる現代の日本人にはちょっと理解できないかもしれませんが、1500年以上も昔から、ずっと続いている宗教行事であり、ムスリムにとって大切な行いなのですね。


でも、妊婦さんとか、小さな子供や病人は断食はつらいんじゃないの?
そこで、断食を免除される人もいます。
それは、妊婦、産婦、病人、乳幼児、重労働者、そして旅行者などは免除されます。ただし、病人や産婦などは、元気になったらまた別の時期に断食をしてもよいとされています。
旅行者も断食は免除されています。今のように交通網が発達していなかった昔は旅行と言えば命がけのものでした。そのため旅行者は断食を免除されていたのですが、現代、一部お金持ちはラマダーンになると海外に旅行に行き、断食を免れている者もいるそうです。


◆ラマダーンっていつ?
ラマダーンは、先ほども説明したように、ムスリムの暦、ヒジュラ暦9番目の月です。
このヒジュラ暦は、月の満ち欠けを基にした暦で、新月(月齢1)の日から暗月(月齢29)の日までを一カ月として12か月が1年となる太陰暦です。
月の満ち欠けはおよそ29.5日。つまりヒジュラ暦の1年は29.5×12=354日と、太陽暦の365日の間に11日間のずれがあります。
同じ月の満ち欠けを基にしたバリ・ヒンドゥー教のサカ暦や日本の旧暦は、数年に一度、閏月を設け太陽暦との誤差を修正していますが、ヒジュラ暦には閏月はなく、誤差修正はしていません。
つまり、ヒジュラ暦は太陽暦に対し毎年11日ずつ早くなっていくのです。
今年のラマダーンは6月28日から7月28日までと言われています。昨年は7月9日から8月6日でした。このように、ラマダーンの月は毎年ずれていっているのです。


あれ?ラマダーンは6月28日から7月28日までと言われています・・・・??? 「までです」じゃないの?
現代は、月の満ち欠けは計算でも正確な日がわかるから、今年のラマダーンは6月28日から7月28日までで決定じゃないの?


実は、違うのです。
ヒジュラ暦では、月の切り替わりはムスリムの長老が実際に夜空を見て月が新月になったのを確かめてから行われるのです。
つまり、曇りや雨などで月が確認できないと、月が切り替わったといえないのです。
計算上は今年のラマダーンは6月28日からですが、月の確認ができない場合は6月29日からになるということです。
※ただし、29日も雨などで月が確認できなかったとしても、前月(シャアバーンの月)が30日以上になることはないので、29日からラマダーンとされるそうです。


また、同じイスラム教でも会派が違うと、ラマダーンの開始日も違うそうです。今年で言うと、6月28日からラマダーンに入る会派もあれば、29日からの会派もあるそうです。


◆ラマダーン中の行事
ラマダーン中は、断食をする以外は、特別な宗教行事はありません。
しかし、日の出から、日没まで断食をするので、断食前後の食事が大変です。簡単にラマダン中の一日をご紹介します。


02:00-03:00 起床。朝食の準備に取り掛かります
04:00-05:00 朝食。ラマダン中の朝食をサフール(Sahur)と言います。
        日の出以降は飲食ができませんので、かなりたっぷりとした朝食をとります。
05:15ごろ  この時間をイムサック(Imsak)といい、これまでにサフールを終わらせなくてはいけません。
05:30ごろ  夜明け前のお祈り(Subuh または Fajarといいます)
06:30ごろ  夜明けです。断食の始まりです。
12:30ごろ  お昼のお祈り(Zuhur)
15:30ごろ  夕方のお祈り(Ashar)
18:15ごろ  日没です。今日の断食は終了。
       日没になるとアザーン(礼拝の呼びかけ)が流れ、断食が終わったことを知らせるそうです。
       断食が終わり、最初の食事をイフタールと言います。
       急に沢山のものを食べると、胃腸がびっくりしますので、伝統的に水とデーツ(Date・ナツメヤシの実)を数個口にします
18:30ごろ  日没直後のお祈り(Maghrib)
       このお祈りが終わると、本格的な夕食となります。
20:00ごろ  夜のお祈り(Isya)


ここに書いた時刻は、日の出、日没を基にしていますので、実際のラマダーンの時期によって変わってきます。ラマダーン月が近づくと、各ムスリムコミニュティでは、各々の時間を書いたタイムスケジュールが発表されます。分単位で決められています。


ちょっと面白いのは、夜明け前のお祈り(Subuh,Fajar)の時間です。実際の日の出は6:30頃なのに、夜明け前のお祈りはそれより1時間以上も前に行われます。
これは、イスラム教は偶像礼拝を禁止しており、もしSubuh(Fajar)のお祈りの最中に、太陽が上がってしまうと、太陽を拝んでいることになってしまうので、わざと日の出より1時間以上も前にお祈りをするのではないかということです。


ラマダーン中は、断食をしますが、それ以外は普段通りの生活をしなくてはいけません。もちろん、仕事や学校もいつも通りに行われます。
しかし、サフール(夜明け前の食事)のために早起きしたり、水も飲めなかったりしていますので、どうしてもふだん通りというわけにはいきません。日中はいつもより元気がなかったり、夕方になると、そわそわして、帰宅もいつも以上に早くなることもあります。
ラマダーン期間中は、どうしてもいつもより生産性は落ちてしまいますが、それでも、ムスリムの人にとってはプアサ(断食)は大切な行為なんですね。


◆ラマダーン中の注意事項
最初に説明したように、バリ島は住民の大半が米・ヒンドゥー教徒なので、ラマダンと言っても特別意識することはありません。
しかし、ホテルスタッフ、タクシードライバー、レストランのウエイターなどの中には、ムスリムの方もいらっしゃるかもしれません。
バリ島を訪れる旅行者が、ラマダーン中に気を付けてほしいのは、むやみに飲み物や食べ物を薦めることはしないということです。親切心で飲み物などを薦めた相手がムスリムだったら、お互いバツが悪くなるかもしれません。相手が非ムスリムでプアサはしていないということが分かるまで、飲み物や食べ物を進めるようなことはしない方がいいでしょう。


ラマダーン月にジャワやロンボクなどイスラム文化の島に行く場合は、注意が必要です。
もちろん、非ムスリムの方に対してプアサを強要することはありませんが、ムスリムの方はプアサの最中ですので、ある程度の配慮をお願いしたいと思います。


具体的に言うと

  • 公共の場所での飲み物、食べ物、喫煙を自粛してください。ガムもNGです。
  • ムスリムの方に、食べ物や飲み物をふるまわない。もちろん、イフタールの時はOKですが、プアサ中は控えてください
  • 地味な服装を心掛ける。キャミソールやタンクトップ、ミニスカートなど肌の露出が多い服装は控えてください
  • ビーチでの行動に気を配る。ホテルのプライベートビーチや観光客専用ビーチならいいのですが、それ以外のビーチでは、水着になることは控えた方がいいでしょう。


自分たちはお客様だから、外国人だから・・・というご意見もあるかとは思いますが、ムスリムの方にとってラマダーン中のプアサは、本当に大切な行いですので、ご理解とご配慮をお願いしたいと思います。


そして、ラマダーンが明けたら・・・イドゥル・フィットリです。
このお話は、またの機会にしたいと思います。